北海道・十勝帯広にある「遊ぶた」の牧場 遊牧舎 泰牧場
遊ぶた(あそぶた)との出会いは東京・門前仲町にあるイタリアントラットリア ブカ・マッシモで食べた「遊ぶた」。あまりに美味しく感動し、この度、北海道は帯広まで行き「遊ぶた」が育てられている遊牧舎 泰牧場を取材させていただきました。
そこに待っていたのは、養豚のスタイルとしては異例の放牧されまくっている「遊ぶた」、呼べば駆け寄ってくる「遊ぶた」、遊んでほしくて人間に甘える「遊ぶた」でした。
「遊ぶた」のいる遊牧舎 泰牧場とは
北海道大学で長年に渡り家畜のエサや育つ環境について研究をされてきた泰先生が、定年後の2014年に立ち上げたのが遊牧舎 泰牧場。離農して荒れ放題だった土地を一から作り直して放牧地を作ったそうです。
(遊牧舎について説明してくださる泰先生)
遊牧舎 泰牧場について、泰さんはホームページでこのように紹介されています。(遊牧舎 泰牧場HPより引用)
私たちの牧場では豚が本来もっている能力を発揮できるように
1・放牧で飼育すること
2・十勝の農産副産物をエサとして活用すること
3・本来人懐こい豚たちとの触れ合い(遊ぶこと)
を大切にしています。
通常「養豚」というと屋根のある豚舎において柵で区切られた中で豚が育てられているというイメージですが、遊牧舎 泰牧場の「遊ぶた」たちは泰さんの言葉通り、北海道の大地で放牧され、のびのびと暮らしていました。
限りなく自然に近い形で遊ぶたを育てるため、草のお手入れのために山羊も暮らしています。
通常の倍以上の期間育てられる「遊ぶた」
一般的な豚は生後半年ほどで出荷されるそうです。しかし遊牧舎 泰牧場では最低でも1年、長いと1年半以上の大きさまで育ててから出荷されています。時間をかけてゆっくり育てた豚のほうが成熟した味わい深いお肉となるからだそうです。
放牧されている「遊ぶた」は我々の想像をはるかに超えていた
(遊ぶたをいっぱいの愛で包む中地さん)
泰さんとともに遊ぶたを育てている中地さんに連れられて、着替えた我々も放牧地に入っていきました。
遊ぶたがいない!
先述のように養豚場というと屋根のある小屋にいる豚たちのイメージでしたが、遊牧舎 泰牧場では放し飼いです。しかも広大な土地。「遊ぶた」がいるはずの放牧地へ入って中地さんの口から出た言葉は「あれ?いない。どこ行ったんだ?」
それくらいに自由に暮らしている「遊ぶた」。
中地さんの「遊ぶた」を呼ぶ声でいっせいに集まってきました。そのときの様子がこちらの動画です。撮って出しで最後もばっさり切れている動画ですが雰囲気は伝わるかと思います。
まず驚いたのは、豚が人間の声に呼ばれて出てくること。そして、その人懐っこさ。泰さんや中地さんだけでなく、初対面の我々4名にも「遊んで遊んで」とばかりに近づき、長靴の先を甘噛みしてきたりする遊ぶたです。
私の膝を見事に「遊ぶた」が鼻で吸引しました。可愛い。
後ずさりすればついてくる、方向変えてもついてくる、どこまでもついてくる「遊ぶた」。
こちらは生後1年くらいになる「遊ぶた」。かなり大きくなっていますが、それでも人懐っこさは変わりません。
水遊びも大好き遊放舎の遊ぶたたち
放牧されている豚を見るのも初めてならば、水浴びする豚を見るのも初めてです。放牧地のところどころに大きな穴が掘られ、水がいれられています。そこで「遊ぶた」たちが気持ちよさそうに水浴びをしているのです。
気持ちよくて瞳もうっとりしています。
一匹が気持ちよさそうに水浴びしていると次々と入ってくる「遊ぶた」の様子がとても愛らしかったです。その様子も動画で。
犬や猫と同じようにコミュニケーションできる遊牧舎の豚たち
「遊ぶた」はケンボローという種類の豚ですが、こちらはバークシャー種のエルちゃんとハナちゃん、そして怪我をして隔離されていたケンボローのシロちゃん。
中地さんに呼ばれて遠くからダッシュしてきます。
中地さんに「皆さんに挨拶して」と言われ、我々のほうに近づいてきて、まるで犬や猫が遊んでほしいときにゴローンと倒れてお腹を見せるかのように、この大きなバークシャー種のエルちゃんも寝ころびます。
正直、驚きました。ここまでコミュニケーションがとれると思っていませんでした。
その様子はこちらの動画でどうぞ。
こんなにも豚たちがコミュニケーションをとれることで、日ごろ泰さんや中地さんがどれだけの愛情を注いで接しているかがわかります。
遊ぶたに最後まで愛をもって
1年以上、愛情を注いで育てた 「遊ぶた」たちにも出荷という旅立ちの日があります。
こちらが従来の出荷台。この先にトラックをつけて「遊ぶた」たちが登っていき出荷されるという形でした。しかしこの狭いスロープだと嫌がる「遊ぶた」もいるそうです。それを無理矢理押し込んで出荷させるのが可哀そうと言うおふたり。
そこで考えられたのがこちらの広い出荷台。反対側はゆるいスロープになっています。この手前側にトラックをつけ「遊ぶた」はそこから出荷されていきます。
それだけではありません。泰さんと中地さんは日ごろからこの手前に台を設置し「遊ぶた」たちの好きなご飯を置き、「遊ぶた」たちが喜んでこのスロープをのぼるようにトレーニングをしています。
そのトレーニングをお二人は「パーティー」と称し、「パーティー」を繰り返しこの出荷台に慣れることで、「遊ぶた」たちはストレスを感じることなく楽しい気持ちで、遊牧舎 泰牧場を後にし旅立っていくそうです。
このお話をうかがったとき、お二人の「遊ぶた」への最大の愛を感じました。
ちなみに従来の出荷台はエルちゃんやハナちゃんの遊び場となっています。
遊牧舎 泰牧場の「遊ぶた」を訪ねて
私は子供のころから動物とともに暮らしてきました。だから動物は大好きです。でも食べることも大好きです。豚肉は一番好きです。
だからこそ今まで、食べるために育てられている豚と、食べる豚肉とを結びつけないようにしていました。別物と考えようとしていました。
もちろん食べるときは感謝してるけど目の前の豚がいずれ食用となると考えると可哀そうに思えて、これから先、豚は食べられなくなってしまうのではないかと思っていたからです。
また今までの私は、生産に携わってる人は「育てている豚は生活の糧になるための豚」と割り切ることができていて、クールに考えているのではないかと思っていました。
でも泰さんと中地さんは違いました。この記事をここまで読んでくださった方に伝わっているといいのですが、お二人は全身全霊で愛を注ぎ、本当に一頭一頭の「遊ぶた」たちを家族のように可愛がっています。出荷するときはお二人も苦しい想いをされてるのではないかと推測できます。だからこそ出荷のときの最後の豚の精神状態まで考えてあげているのでしょう。
遊牧舎 泰牧場のこちらのページの中段に「仲間が出荷され1頭だけになってからの10日間--」というくだりと写真があります。そちらをご覧ください。
これから今まで以上に感謝して美味しくいただきたいと思います。
遊牧舎 泰牧場
公式ホームページ:https://www.yubokusha.jp/
*今回は取材という形でお伺いしました。訪問に関しては遊牧舎にお問い合わせください。
*「遊ぶた」はこちらのページからネット通販で購入することができます⇒商品紹介 - 遊牧舎
一緒に行った村上さんの記事