60周年を迎えるスパリゾートハワイアンズとは
1960年代、日本の主要なエネルギーが石炭から石油へと移り、本州最大の炭砿だった、常磐炭鉱も閉山の危機。
中村豊初代社長は「これからの常磐炭鉱の従業員の生活をどうしたらいいのか」、ヨーロッパからアメリカまで視察してまわったそうです。時はちょうど、ニューヨークで万博が開催されており、そこの「タヒチ館」でタヒチアンダンスを見て、「これだ!」と思ったそう。
その後、フロリダへと移動したところでハワイ州の議員の方に出会い「それだったらハワイを見てほしい」と言われ、予定になかったハワイへと行きました。そこで中村初代社長は「東北に日本のハワイを作ろう」と決意してできたのが、常磐ハワイアンセンター(現在のスパリゾートハワイアンズ)です。
この常磐ハワイアンセンターの誕生秘話を聞かせてくれたのは、他でもない中村豊氏から「常磐地区の女性たちにダンスを教えてやってほしい」と呼ばれてきたカレイナニ早川先生(93歳)です。
映画「フラガール」をご覧になった方ならイメージしやすい、松雪泰子さんが演じた、何も知らない常磐の女の子たちをダンサーとして育て上げられた先生です。
カレイナニ早川先生が初めて常磐地区に来たとき、ここは鬱蒼とした山で、坂を上ってくるときに周りは豚や鶏に迎えられたのだそう。
そのお話を聞いたとき、まさに映画「フラガール」で、周りに何もない農道をトラクターの荷台に乗せられて登場した松雪泰子さんのシーンが浮かびました。
第61期生 新人フラガールのレッスンがスタート
2025年4月16日、この日は第 61期生新人フラガールのにとっての初レッスン。そして、指導に立たれているのは、1965年4月に開校した常磐音楽舞踊学院の第1期生から指導されているカレイナニ早川先生です。
第61期生となる新人フラガール(正式名称:スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチーム)は4名で、7倍という難関から選ばれた4名なのです。
写真向かって左から
渡邉梨乃(わたなべりの)さん(福島県須賀川市)6歳のときにはじめてハワイアンズのショーを観て、フラとタヒチアンダンスをはじめる
増田りお(ますだりお)さん(福島県いわき市)8歳のときにはじめてハワイアンズのショーを観て感銘を受けフラとタヒチアンダンスを習いはじめる
豊田愛心(とよだあみ)さん(福島県いわき市)高校1年生から部活動でフラとタヒチアンダンスをはじめる
清野惺久(せいのしずく)さん(静岡県裾野市)5歳のときにはじめてはいワンズのショーを観てフラを習いはじめる
すぐに誕生日が来る人もいましたが、この日は全員18歳。フラ歴がある方ばかりで、短い人でも3年、長い人では13年もの経験があります。
レッスンの様子をショート動画にまとめましたので、先に紹介させていただきます。
#スパリゾートハワイアンズ 今年の新人フラガール(第61期生)レッスン初日の取材動画です。講師は、映画フラガールで松雪泰子さんが演じた講師のモデルとなったカレイナニ早川先生です。
— 矢野きくの ( 家事アドバイザー・防災士・主婦) (@yanojapan) May 20, 2025
#渡邉梨乃 さん #増田りお さん #豊田愛心 さん #清野惺久 さん #カレイナニ早川 先生 #福島県 #いわき市 pic.twitter.com/LEvVzpoibC
愛情で包み込むようなカレイナニ早川先生のレッスン
日本のフラダンスのレジェンドと言っていいカレイナニ早川先生の授業を受けるという時間、レッスン場の空気は張り詰めていました。(見ていた私も緊張)
それが…、はじめにカレイナニ早川先生は新人さんたちの元に歩み寄り、レッスン着を可愛く見えるように直していらっしゃいました。カレイナニ早川先生は間違いなく偉大な方なのですが、決して近寄りがたい方ではありません。取材前、報道陣が建物の外で待っていると「早く中に入っていただきなさい」とお気遣いいただいたのも印象的でした。
ダンスにはリズムにあわせてどのタイミングで動くか“後ノリ”、“前ノリ”とあり、それが違ってくると踊りが揃わないそう。レッスン初日は、常磐音楽舞踊学院、ハワイアンズのフラガールとしての踊り方を教わることからはじまりました。
カレイナニ早川先生はご自身の体を使い、その違いを指導されています。
この日はフラの古典でもある「カビカ」をレッスン。カレイナニ早川先生は曲にあるストーリーを解説しながら踊りを指導。自然と新人さんたちの表情もストーリーにあっていくのを感じました。
「指先までがあなた達の体」というカレイナニ早川先生の言葉があると、新人さんたちの指先の動きも変わってきます。
目の前でその変化を感じるレッスンでした。
第1期生からすべてつながっているフラガール
レッスンが終わり、カレイナニ早川先生が報道陣に話してくださったのが、冒頭でご紹介した中村豊氏が常磐ハワイアンセンターを作るに至った経緯です。
そして1965 年 4月に開校した常磐音楽舞踊学院の第 1 期生たちはPRのために、全国70ヶ所をまわって公演をされたことも話してくださいました。このようにして常磐ハワイアンセンターは日本初のテーマパークとして大成功したのです。
カレイナニ早川先生の話は続きます。2011年に起こった東日本大震災です。
スパリゾートハワイアンズの施設自体も大きな被害を受け、フラガールはステージを失いました。しかし、このときも、第1期生が全国をまわったように、フラガールは全国をまわり「きずなキャラバン」として踊り続けたのです。カレイナニ早川先生はこのときのメンバーの写真を掲げながら、その話をしてくださいました。
カレイナニ早川先生が伝えたかったのは、“今日ここに第61期生のフラガールがスタートしたけれど、これは点ではなく、第1期生から繋がっている線である”と、いうことなのではないかと私は感じました。今まで常磐音楽舞踊学院に入ってきたすべてのフラガールたちを大切にされていることが伝わってきます。
お話が終わり「どうぞこの子たちの話も聞いてやってください」と少し下がったカレイナニ早川先生。
初めてインタビューを受け、緊張している新人フラガールたちを遠くから見つめるカレイナニ早川先生は、包み込むような優しさで見守っていらっしゃいました。
その光景がとても美しく印象的で、慌ててカメラを向けて盗撮のような写真になってしまいごめんなさい。でもこんなに温かく見守られていること、4名の新人さんたちにも知ってほしく掲載します。
初めてバレエシューズに足を入れたときの感想は?
レッスン初日にあたり、この日は常磐音楽舞踊学院から新人さん一人ひとりにバレエシューズが支給されました。今までもフラの経験がある4名ですが、この日に支給されたバレエシューズにはじめて足をいれたときの感想をうかがってみました。
渡邉梨乃さん
「今まで裸足で踊っていたのでバレエシューズは初めての感覚でした。でもとてもワクワクしています」
増田りおさん
「少し緊張しました。でもこれからのことを想像すると嬉しかったです。」
豊田愛心さん
「やっとフラガールの第一歩に進めたようでワクワクしました。」
清野惺久さん
「履いた瞬間に、これでこれからレッスンをさせていただくだなと緊張感がありました。」
カレイナニ早川先生はフラガールに教えたいこととして4つのことを挙げられました。
・強靭な精神力
・表現力
・センス
・マナー
今日ここに61期生の新人フラガールたちがいるのは、この60年間というハワイアンズの歴史と、そこに携わった人たちの存在があるからこそという想いがひしひしと伝わってきます。
また故・中村豊氏に言われたように、60年間一人ひとりのフラガールに対して踊りだけでなく、人としてあるべき優しさや強さをもつことを育てていらっしゃることも強く感じました。
一人の働く女性である筆者としては、このような環境に身をおける新人フラガールの4名は本当に幸せなことだと思います。
がんばってほしい。そしてあの大きなステージで輝いて踊る日を楽しみにしています。
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この日、レッスン場の前にある大きな枝垂れ桜が満開でした。
東日本大震災と原発事故のときに、ハワイアンズで避難生活を送られていた広野町の方たちから贈られた「希望のさくら」です。
2025年5月現在、映画「フラガール」はHuluで月額サブスク内で視聴可能。Amazonプライム・ビデオ、Apple TV、YouTubeなどで300~400円で視聴可能です。
(取材協力)スパリゾートハワイアンズ
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福島中央テレビ